月餅を見れば、いまの中国のトレンドがわかる!
月餅はスーパーやコンビニで気軽に買えるお菓子です。しかし、「月餅は中国のお菓子」ということ以外は、あまり知らない方も多いのではないでしょうか?
私たちがイメージする月餅は主にあずき餡入りの甘い月餅ですが、中国で売られている月餅は多種多様、そして時代背景によって姿かたちが変わります。
この記事では、多くの日本人が知らない月餅の話や今年流行の月餅、そして出張みやげにオススメの月餅についてもご紹介します。
月餅のことをもっと詳しく知ろう!
月餅の歴史はこんなに長い
月餅を食べる風習は周の時代(紀元前1046年~1256年)に遡ります。月餅は当初、月をまつる儀式で使用されるお菓子でした。月餅は3000年もの長い歴史を持つ特別なお菓子なのです。
月餅はなぜまるい?
中国の伝統的な月餅は通常、丸い形をしています。月餅の丸い形は「团圆(tuányuán・一家団欒)と円満のシンボル」とみなされているため、中国人は中秋節に家族そろって月餅を食べるのです。
中秋節とは、旧暦の8月15日、秋の名月を愛で収穫を祝う節句のこと。中国では中秋節はとても重視されており、この日は会社や学校がお休みになります。
月餅の名付け親はアノ人
「月餅」の名付け親は、世界3大美女のひとり、楊貴妃だといわれています。月餅はもともと「胡餅(フービン)」と呼ばれていました。
ある年の中秋節、唐の第9代皇帝・玄宗と楊貴妃が満月を愛でながら酒を飲んでいました。そのとき、月を見上げて月餅を口にした楊貴妃が、「フービンという名は優雅さに欠けるので、これからは“月餅”と呼ぶことにしましょう」と提案したことが史料に記載されています。
時代によって進化する月餅
3000年ものあいだ中国人に愛され続けてきた月餅。しかし、時代の変化とともに月餅も変化し続けてます。では近年、どんな月餅が人気なのでしょうか。
近年の流行はズバリ「健康志向」
2024年の月餅のトレンドはずばり、「低糖」「キシリトール」「薬膳」です。コロナ禍以降、中国人の健康志向が上昇していることを反映していますね。
月餅は熱量の高いお菓子なので、カロリーを気にせず食べられる「低脂肪・低糖」、「無糖」をうたった月餅がポピュラーになりつつあるのです。
さらに今年は、漢方を取り入れた月餅が大人気。クコの実・ハトムギ・ハスの実など漢方の材料を餡に練り込んだ月餅が売れ筋となっています。
食べてみたい!ハイブランドの月餅
中秋節が近づくと、数多くの企業や機関が“月餅商戦”に乗り出します。なんと、エルメス・ヴィトン・グッチ・ブルガリなどの高級ブランドまで「超高級月餅」を売り出すのです!
ケリーバック風の箱に入っていたり、素敵な茶器がセットになっていたり…。見ているだけで思わずウットリしてしまいますね。
出張みやげにオススメな月餅
中国に出張予定のある方向けにオススメなのは、「スターバックス月餅」や「M&M’s月餅」、「ディズニー月餅」など、日本人にも馴染みのあるメーカーから発売される月餅です。
「月餅は甘すぎて苦手」という日本人も、コーヒー風味で甘すぎないスタバ月餅や、大好きなディズニーの月餅なら食べてみたいと思うのではないでしょうか。ただし、人気の月餅はすぐに売り切れてしまうので、欲しい方は早めに購入しましょう。
日本人が知らない3つの″月餅こぼれ話”
毎年の中秋節に欠かすことのできない月餅。中国では、月餅にまつわるニュースや興味深いウラ話が数え切れないほどあります。ここからは、日本人にあまり知られていない月餅のこぼれ話を3つ、ご紹介します。
並んでも食べたい!上海の肉入り月餅
月餅は甘いものだけではありません。地方によってはナマコ入り、中華ハム入りなど、変わった餡も数多くあります。日本人の口に合わないものもありますが、私がオススメしたいのは、「鮮肉月餅」と呼ばれる上海の肉入り月餅です。
外側はパイ生地のようにサクサクで、ジューシーなお肉がたっぷり詰まった「鮮肉月餅」。軽いのでつい何個も食べてしまうおいしさで、上海在住の日本人にも人気の月餅です。
鮮肉月餅を求める「老字号」(lǎozìhao・老舗)レストランにできる行列は、上海の中秋節の風物詩となっています。なかでも「泰康食品公司」と「光明邨大酒家」の月餅はとりわけ有名です。
中秋節の時期、2~3時間の行列は当たり前ですが、実はこの2店舗の月餅は年間を通していつでも買えますので、食べてみたい方はぜひ試してみてください。ただし、肉を使った食品を国内に持ち込むことは日本の法律に違反するためご注意を!
中国人にとっての月餅は、正月の餅?
中国では、お世話になった人や会社に月餅を配る習慣があります。社員に月餅を配る企業も少なくありません。そのため、中国では中秋節が終わっても食べきれずに残っている月餅の箱が山積み…という事態に陥ります。
カロリーが高い月餅を1日に何個も食べられないですよね。それに食べ続けると飽きてしまいます。毎年たくさん残った月餅に頭を悩ませる中国人は少なくありません。
「毎日1個ずつ食べてもまだ11個ある。頑張るぞ!」「節約のため、これから朝ごはんとおやつかわりに1個ずつ消費する!」…。ネット上には、このようなボヤキが溢れ、残った月餅を野菜と炒めてみたり、火鍋の具にしてみたりといった苦し紛れのレシピが多く出回ります。
行事のあと食べきれずに余る月餅…。ちょっと、日本の「正月明けの餅」と似ていますね。
精神病院の月餅が「网红(ワンホン)月餅」に
毎年の月餅商戦に参戦するのは、メーカーや企業だけではありません。なんと、大学や病院までもがオリジナル月餅を発売します。
近年とりわけ話題となっているのが、上海市にある著名精神病院「上海市精神卫生中心」が、病院のある住所から名前をとった「苑平南路600号」(yuàn píng nán lù 600 hào)月餅)です。
精神病院が月餅を販売するだけでも驚きですが、なんと病院の「病」(bìng)の発音が月餅の「餅」(bǐng)と同じことから、「精神餅(病)」という月餅を発売しました。
話題性とアーティスティックなパッケージが人々の心を惹きつけ、たちまちネット上で「网红(wǎng hóng)」月餅となりました。
まとめ
私たちが日ごろ何気なく食べている月餅ですが、中国では月餅は3000年の歴史を持つ、ロマンティックで特別なお菓子です。
今年の売れ筋月餅を見ると、中国人が健康を重視していることがわかりますね。また、伝統的な月餅とともに人目を惹く月餅も人気です。珍しい月餅をゲットしてSNSにアップする人も増えています。
皆さんも、秋の名月を眺めながら月餅を味わってみるのはいかがでしょうか。