私は2021年4月〜2022年2月まで上海に滞在しました。短い期間でしたが、内科(日系クリニックと中国系総合病院)・眼科(中国系眼科専門病院)・心療内科(中国系高級クリニック)を受診しています。
病院を受診して実際に感じたことは、「日中の医療は同じではない」ということです。本記事では、中国の医療機関で私が感じた「違い」について、診察科目別にご紹介します。
※あくまでも私個人の体験と感想です、どうぞご了承ください。
内科(バセドウ病)
上海ロックダウン中にバセドウ病(甲状腺機能亢進症)を発症し、ロックダウン解除後に受診した日系クリニックで治療を開始。その後、薬の副作用が出てしまったため、「ウェルビー」(多くの日系企業が契約している海外でメディカルサポートをしてくれる企業)を通じて、専門医のいる中国の総合病院を紹介してもらいました。
紹介された「瑞金病院」は庶民的でクラシカルな病院ですが、「甲状腺といえば瑞金」といわれるほど内分泌内科では有名な病院です。穏やかに話をする女性医師が私の担当医になりました。
診察中に他の患者が入ってくる
いちばん驚いたことは、私の診察中にも関わらず、すでに診察を終えた患者やその家族が自由に診察室に入ってくることです。患者は先生にあれこれ質問し、その都度先生も丁寧に答えていました。日本の病院では考えられないことですね。
魚も貝もダメ!海産物は一切禁止に
「バセドウ病」は甲状腺ホルモンを過剰に産生してしまう疾患です。甲状腺ホルモンの主原料はヨウ素(昆布など海藻類に多く含まれる)なので、この病気になると「ヨウ素を多く含む食材を制限することが望ましい」と指導されます。
私も日系クリニックで「海藻類をできるだけ控えるように」と注意されていましたが、瑞金医院の先生には「魚や貝を含む海産物は一切口にしないこと」と言い渡されてしまいました。
理由を尋ねると、「だって魚は海藻(海藻はヨウ素を多く含む)を食べるでしょ?」とのこと。確かに一理ありますね。
中国人は川魚やザリガニなども食べる習慣があるので平気かもしれませんが、日本人の私にとって「海産物をすべて排除する」ことは結構キツいことでした。
ちなみに、日本に帰国してかかった病院では「魚は体に良いので積極的に摂取しましょう」といわれたので再び魚を食べています。また、ヨードを多く含む海藻も「通常量なら摂取してよい」と指導されました。幸いなことに、今のところ数値は安定しています。
バセドウ病はコロナに罹りにくい?
中国は2022年12月に「ゼロコロナ政策」を解除し、人々は一斉にコロナに感染しました。しかし、私は「甲状腺ホルモンが少し高いほうがコロナに罹りにくい」という理由で、基準値よりも少し高めの数値で病気をコントロールしてもらっていたのです。
どんな人混みに行っても私だけ感染しなかったのは、このせいかもしれません。しかし、日本の医師にこの話をすると「数値は基準範囲に戻す」とのことでした。その後、私はすぐコロナに感染しましたが、それが偶然かどうかは正直わかりません。
このように、日中の医療機関では治療方針に多少の差があるようです。
眼科(飛蚊症)
帰国を直前に控えたタイミングで飛蚊症になってしまいました。網膜剥離のリスクもあると聞いて急遽、眼科を受診することになったのです。
日本人向けの現地フリーペーパーを見て、「上海愛爾眼科医院」に行ってみることに。この病院には日本語通訳がいますが、患者のほとんどは韓国人とのことです。
「愛爾眼眼科医院」は新しく立派な病院で、最先端の検査機器が多く揃っています。それらを使っていろいろ検査をしてもらえるので安心感がありました。
おばあちゃん医師に「病気との向き合い方」を学ぶ
検査後は年配の医師が診察してくれました。私自身、決して若いといえる年齢ではありませんが、先生はまるで自分の孫と接するように優しく丁寧に接してくれたのです。
他にも、バセドウ病が目に影響することもあるとのことで、「ストレスをためずに毎日明るく生活しなさい。病気は病院が治すのではなく、7割は自分の気持ちで治すものなのよ。」と、持病に対するアドバイスまでいただきました。
日本の病院ではそのようなことを言われた経験がないので、先生のこの言葉は今も心に残っています。
心療内科(睡眠障害)
2022年12月、「ゼロコロナ政策」が解除された直後に眠りが浅くなったと感じ、ウェルビー経由で「コロンビアクリニック」を受診。ここは日系クリニックではありませんが、高級感があり、待合室では日本人を数組見かけました。
先生のおしゃれな部屋でおしゃべりするように
広々としたセンスの良い部屋で私を待っていたのは、日本語堪能のエレガントな女性医師。日本なら医者は白衣を着用して事務的に話をするのが普通ですが、この先生は思わず見とれてしまうほどおしゃれな私服での診察でした。
先生とゆったり話をしていると、「まるで自分には姉がいて、素敵な部屋で悩みを聞いてもらっている」かのような錯覚に陥ります。
軽い睡眠薬を処方してもらいましたが、効果は想像したより強めでした。しかし、リラックスムードのなかで専門家に話を聞いてもらい安心したのか、クリニックに通ったのはこの一回限りです。
まとめ
私が上海でお世話になった中国人医師は皆、「信頼できてフレンドリー」という印象を受けました。医療環境も、私のかかった眼科のように最先端の機器を揃えた病院が多く存在します。
私自身が医療通訳の資格を持っているからか、臆することなく中国の病院を受診することができました。私がお世話になった医療通訳の日本語能力は非常に高く、上海に住む日本人はその点でも安心できると思います。
上海で心身に不調を感じたら、躊躇せず病院にかかることをおすすめします。なんといっても日系クリニックがあるので安心ですし、もしウェルビーに加入していれば、大病院でも診察待ち時間はほとんどかかりません。その点がとてもありがたかったです。