倍率なんと86倍!中国の“考公ブーム”―若者が公務員を目指すワケ
ここ数年、中国のネット上で“考公热”(kǎo gong rè)というワードをよく目にするようになりました。“考公”とは「中国の公務員試験(考试/kǎo shì)に参加する」こと。つまり、中国で起きている“公務員受験ブーム”を指す言葉です。
この記事では、中国の公務員受験ブームにある背景、試験の難易度や実際に出された問題、また、公務員になるとどんな生活が待っているか、などについて解説していきます。
今なぜ「考公ブーム」?その背景にあるもの
中国に“公務員試験ブーム”が起きている理由は少し前の日本の状況と似ていますが、中国ならではの理由も存在します。
2015年、中国の公務員倍率志願者数は現在の三分の一だった
2015年、中国はバブル景気に沸いていました。好景気にともない、起業する若者の数も急増。中国国務院によると、2017年の中国での新規企業登録数は607万社と、2年前の2015年と比べ4割以上も増えています。
当時、中国の経済発展がすさまじく、“アリババ、テンセント、バイドゥに続け”と、「チャイナドリームで一発当てたい」と意気込む若者が大勢いる時代でした。
そんな好景気の中、起業を目指さない若者は、安定した公務員になるよりも大手民間企業への就職を目指していたのです。ちなみに2015年の中国国家公務員試験の出願者数は、5年来最も低い数字にとどまっています。
日本の就職氷河期にも同じような傾向があった
しかし、コロナ後の景気低迷により企業のリストラや倒産、また、大学を卒業しても職に就けない若者が増加しました。そこで「一発当てるより安定を望む」若者が急激に増加したのです。
日本でも就職率が悪化すると、公務員志願者が増える傾向があります。1993年〜2005年の就職氷河期世代の公務員試験の合格倍率は約20倍以上でした。それによく似た現象が、いま中国で起きているのです。
“内巻”に疲弊した中国の若者は公務員をめざす
公務員志願者が増える理由は、就職難のせいだけではありません。中国ならではの理由もあります。中国人は幼い頃から厳しい競争社会にさらされています。そんな“内巻/nèi juǎn”(限られたパイを取りあう不毛な競争のこと)の人生に疲れ切ってしまった若者も少なくありません。
そこで、民間企業のように残業を強いられたり厳しい競争したりする必要がなく、比較的安定した収入が得られる公務員に人気が集まっているのです。
もはや宝くじ?中国の公務員試験の驚くべき倍率
日本の就職氷河期、公務員試験の合格率は20倍以上という難関でした。では、中国の公務員試験の倍率はどれくらいなのでしょうか。
2025年、中国の公務員試験の合格率はなんと〇倍!
2024年12月に実施された2025年採用の筆記試験の出願者数は341.6万人と、過去最高となりました。そして、定員に対する倍率の平均はなんと驚異の86倍、人気の職種になると倍率は1万6000倍と、「宝くじに当たるより、はるかに難しい」競争となっています。
“内巻”から逃れようと公務員受験を受験したはずなのに、いまや“考公内卷”(公務員受験において少ない合格率を多くの人が奪い合う状況)が生まれてしまっているのです。それにしても、どんなに努力しても、まったく合格する気がしない倍率ですよね。